人工股関節プラザ

 人工膝関節手術と違って、人工股関節のMISは、進入法の変更を伴っていた。
 その特徴として当初筋肉を切らない、そのため人工股関節手術に特有の合併症である脱臼しないと言われた。

 日本では、従来後側方進入法(PL)が多く行われていたが、新たに前方進入法(DAA)、前側方進入法(OCM)が提案された。

 
 

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 前方進入法 (DAA)とは、大腿筋膜張筋と縫工筋、大腿直筋の間から股関節前方へ達する方法です。
 前側方進入法 (miniOne,OCM)とは、大腿筋膜張筋の後縁で大腿筋膜を切開し、大腿筋膜張筋と中殿筋の間で進入する方法で、股関節を屈曲して行うとminiOne、股関節をコブラツイスト(プロレスの技)のように伸展するとOCMということになります。
 後側方アプローチは大殿筋を分けて、短外旋筋群を大転子後方で切離して関節に到達する方法です。
 次にそれぞれの得失について考えます。

 
 
 
 

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 表から、それぞれの手術法が一長一短であることがお分かりいただけると思いますが、前方法では高頻度に知覚障害が出現すること、また前方法と前外側法では骨折の可能性や片脚で立つ時に重要な役割を果たす外転筋を挫滅する可能性が高くなること、後外側法では外転筋の挫滅を回避できる可能性が高いこと、ステムを正確に設置できることで、長持ちする人工関節手術が可能なことから、当院では後外側進入法を採用しています。
 脱臼のリスクについては、議論のあるところですが、関節包をきちんと再建することで軽減することが可能です。

 
 
 
 

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 健常な骨を残しておくために、初回手術に小さなステムを用いて2回目に備えるという考え方も成り立ちます。
 これが真の意味でのMIS(MI-THA)でしょう。ただこういうステムを使った場合、安定性の良い従来型のステムを使った場合より、ゆるんでしまう事例が増える可能性があることも推測されます。
 冒険と安定はいつもうらはらです。

 
 
 
 
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 これは人工股関節手術をシミュレーションした画像です。術前に人工関節のサイズや入れ方等を検討してから手術に臨んだ方が、短時間で正確な手術ができる筈です。
 しかし日本中でこのシステムを取り入れている施設は数%以下にとどまっているそうです。
 何故でしょうか?

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 これは当院で術中ナビゲーションを用いて手術を行っているところですが、残念ながら現在は用いていません。その理由は、勿論高価であること(日本の医療は厚労省の管轄下にあって、ナビのシステムを導入すると病院は赤字になってしまいます)もありますが、従来ナビ無しで手術をしてきた医者にとって、無ければ無くてもやれること、案外ナビの利用が時間を含めて面倒なことがあります。
 自動車のナビだって無ければ無いでやっていたでしょう。それと同じことです。
 ただ将来、股関節外科医になった最初からナビがある施設で育った医者が主流になった時は、ナビは無くてはならないものになるでしょう。
 
 
 
 

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 ここで現在使われているステムの2大潮流であるアメリカ発のトータルコンタクトとドイツ発のマクロアンカーリングの相違を確認しておきましょう。

 左図のトータルコンタクトでは、体重でステムが骨髄腔に押し込まれると、
髄腔を押し広げようという力(フープストレスといいます)が発生して安定性を保ち、右図のマクロアンカーリングでは、断面図で見るようにステムの角が骨皮質に食い込んで安定するというメカニズムが働きます。
 角を立てるということが骨粗鬆症の強い場合は不向きだと思っていましたが、採用してみると案外大丈夫なように感じています。
 
 
 
 

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